セントジョーンズワート
オトギリソウ科
〜イエスの奇跡の草〜
ヨーロッパ原産の多年草で、現在は世界各地に分布しているセントジョーンズワートは、,約2000年も前から精神を鎮静させる効果のあるハーブとして利用されてきました。最近ではうつ病の治療に効果があるとして注目され、サプリメントなども人気も高まっています。
夏至の頃に小さな黄色い花を多数咲かせますが、その開花期が聖ヨハネ(St Jhon)の祝日(6月24日)頃であることが、名前の由来であるといわれています。十字軍遠征の際には、兵士たちの打ち身や切り傷を癒す薬として携行され、「イエスの奇跡の草」とも呼ばれていました。
学名のHypericumは「上」を意味しているという説があります。古くから、この草には強い魔除けの力があると信じられ、聖像などの上に置いて無病息災を祈ったことに由来するようです。
中国では「小連翹(ショウレンギョウ)」という生薬として利用されています。地上部を乾燥させたものを煎じて飲用すれば、痛みを鎮めたり月経不順に有効とされ、生葉の搾り汁は止血剤として外用するなど、古くから利用されてきました。
和名の「オトギリソウ(弟切草)」という名は、平安時代、この草を原料とした傷を治す秘薬の秘密を口外してしまった弟に怒った兄の鷹匠が、弟を斬り殺してしまったという伝説に由来します。葉や花をよく見ると、細かくて赤黒い油点がありますが、弟の血が飛び散ったもので、永遠に消えることがないといわれています。
この油点の赤黒い色は「ヒペリシン」という色素成分によるものです。ヒペリシンには強い抗ウィルス作用や抗炎症作用があり、エイズウイルスに対しての効力もあると考えられ、治療に利用するための研究が進められています。
また、不安定な精神を鎮静させる働きもあるといわれています。脳内では神経細胞を通じてセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの脳内物質が分泌することによって精神を安定させたり、やる気を起こさせたりしています。うつ病の原因の一つはこれらの脳内物質の不足にあるとと考えられていますが、ヒペリシンには、その減少を阻止する可能性があるといわれます。さらに、近年のドイツにおける研究により、セントジョーンズワートに含まれる別の成分「ヒルペルフォリン」にもこれらの脳内物質の減少を防ぎ、神経活動が活発化することが確認されました。このことから、うつ病だけでなく自律神経の乱れや不眠、更年期障害、月経障害などへの効果も期待されています。
セントジョーンズワートを薬用の植物油で冷浸出すると、ヒルペリシンの色素成分により赤色の浸出油が得られます。この浸出油を塗布すれば、打ち身、捻挫、外傷、火傷、痔、リウマチ痛など、さまざまな症状に効果があるとされています。
ただし、ピペリシンには、紫外線を強く吸収して、体内の光感受性を促進するという性質があるため、動物がこれを大量に食べて日光に当たると、皮膚炎を起こして脱毛するとさえいわれます。したがって、外用に用いたり、多量の煎液を服用した後は日光に当たらないように注意する必要があります。また、セントジョーンズワートは体内の薬物代謝酵素の働きを強め、薬の効果を減少させてしまう恐れがあります。煎液やサプリメントなどによる通常の摂取量では問題はないといわれていますが、念のためHIV治療薬、強心薬、免疫抑制剤、血液凝固阻止薬、ピル、気管支拡張薬、抗てんかん薬、ぜんそく治療薬、抗不整脈薬などの医薬品との併用は控えた方が良いようです。
前のページへ